白の空間
── かろうじて、ほつれながら残っていた細々しい 何かの糸
はじめに
※この文章は、心の奥にある傷や、語り直しにまつわる葛藤を含みます。
過去の経験が揺さぶられる可能性のある方は、ご自身のペースを大切にしながら、お読みください。
── あの時、目に映る全ては白濁して、形も色も輪郭も失われていた
窓から差し込む光は濁り、眩しいはずなのに、暖かさも柔らかさも伝わらない
輪郭を失った影が床にぼんやり広がり、景色は靄に呑まれ、現実ですら夢の残骸のように遠のいていった…
冷たい窓ガラスに指先を触れると、白濁した空気が震え、指先を通してその重みが胸に押し寄せた
眠ることも、自分に赦せなかった…
目を閉じても、暗闇は胸を切り裂き、孤独は肌の下に滲み込み、心臓の鼓動がわたしを嘲るように響いた
透明な壁があった。目には見えないのに、確かにそこにある…
わたしと世界を隔て、触れられず、混ざれず、救いのない壁
窓の向こうでは、子どもの笑い声、遠くで鳴るチャイム、閉まるドアの音、台所から立ち上る料理の匂い──
すべてが、曇りガラス越しの幻のようだった…

誰にも会いたくなかった。ほんとうに、一人も…
誰の声も、誰の手も、誰の眼差しさえも──すべてが、わたしを切り裂く刃物のように思えた
触れられることも、名前を呼ばれることも、ただ怖くて、胸の奥が締め付けられ、声を出すことさえできなかった
目の前の景色は白く濁り、輪郭を失い、物も光もすべてが遠く、手に届かない……
ようやく、少しだけ、自分がここまで追い詰められているのだと気がついて、同時にその自覚が胸をさらに哀しく情けなく絞めつけた
部屋の隅に押し潰されるように小さくなり、体を抱き込み、息をひそめながら
「このまま、静かに消え去れたら……」と本能かのように痛切に願う一方で、目の前には、いつも大事な愛猫がいてくれた
どんなに苦しくても、根強く、胸の奥から力強く、この子のためには生きなければ──という思いが無条件に、切実に生命を繋いでくれていた
小さな体なのに、温かく、揺るぎなく、胸の奥に確かな重みを持って響く、愛らしい目…
目を細めて寄り添う仕草、震える声、柔らかい毛の感触、温かな呼吸──
そのすべてが胸の奥で糸のように絡まり、絶望の底で確かな生命と信頼の響きを立ち上げる
肩甲骨の隙間が硬く張りつき、動かすたびに骨の間から冷気が入り込むように感じる
胸の奥で心臓が沈むように重く跳ね返り、呼吸は詰まり、肩、腕、背中、腰まで重苦しい波が伝わる……
背中は硬い床に貼りつき、体温は少しずつ奪われる…
指先や足先は氷のように冷え、血の流れさえも「人の世界から拒絶されている」と痛感させられる
胸の奥の石のような重みは、骨の隙間に沈み込み、動こうとするとさらに押しつぶされるようだ…
骨の生気が吸い取られ削られていき、筋肉は細く硬直し、関節は鉛のように重く軋む
腹の奥は空虚で、胃腸は押し潰され、痙攣する……
呼吸は浅く、肺の底には酸素が届かず、胸骨の下で鼓動が痛むほど不規則に跳ねる
指先や足先は氷のように冷たく、神経が小刻みに震えている
声を出すことも、涙を落とすこともできず、胸の奥で痛みと重みが螺旋状に絡み合う
眠ることもできなかった。夜が来るたび、暗さが胸を切り裂く…
階段から足を踏み外すことを何度も、心の底で願った…
薬の袋を手に取り、ラベルの文字をじっと見つめる
胃は空っぽなのに食べ物を受け付けず、歯を磨く気力もなく、口の中はざらつき苦い …
シャワーも浴びられなくて、自分の体臭さえ感じて、それまた情けなくなる…

それでも愛猫のご飯をあげ、水を替え、トイレを掃除し、短い時間でも遊んであげると、痛みも少し和らぐような気がした
その小さな体のぬくもりに触れるたび、まっすぐであどけない澄んだ瞳を見つめるたび…
胸の奥の生命の糸が震え、体にわずかな力が戻る…
消えたい思いと、この子のために生きる思いが螺旋状に絡まり、骨と筋肉、内臓を蝕みながらも確かに生命を繋ぐ
白濁の光が差す朝 ──
肩甲骨の間の筋肉が硬く張り、動くたびに軋む…
胸の奥では心臓が重く跳ね、呼吸が浅く、胸の内側でリズムが不均衡に震える
二の腕や肘、膝、腰まで軋むような痛みが広がり、指先と足先は凍えるように冷たく震えている…
目の色はかすかに潤み、瞬きのたびに涙が流れそうになるが、涙は出ない
呼吸は途切れ途切れで、声の震えが胸の奥に響く…
愛猫の鳴き声、柔らかい毛の感触、温かい体温が胸の奥で糸を震わせる
「消えたい」と思う心と、この子のために生きる心が、胸の奥で螺旋状に絡まり、絶望と生命を刻み込む
昼 ──
光は鈍く、空気は重く澱む…
腐りかけた食材、山積みの洗濯物、部屋の匂い──すべてが胸に刺さる
携帯の着信音に心臓が縮み、骨と筋肉、関節が軋む
呼吸は浅く、声は出ず、体全体が沈むように痛む…
それでも愛猫は体をすり寄せ、胸の奥の生命の糸を揺らしてくれる、ふわっとした柔らかさと、あどけなさと心配してくれている瞳
それなのに私の糸は細く、ほつれかけ、消えそうで、絶望と生命を絡めて離れない…
目の奥で涙がこぼれそうになり、口の奥がざらつき、内臓が重く圧迫される
夕 ──
白濁の光はさらに鈍り、影が床に長く伸びる様をむなしく眺めている…
トイレに立つこと、家事、階段の上り下り──すべてが山を登るように重く、背骨、肩、腕、脚が軋む
腹部の奥がきりきりと痛み、筋肉が鉛のように重くなる
それでも愛猫の存在は、胸の奥の生命の糸を震わせてくれる…
愛おしくて、たまらない… 無条件に …
消えたい思いと生きる思いが螺旋状に絡まり、絶望と生命が同時に深く深く魂に刻み込まれる…
鼓動は速く、リズムが乱れ、胸の奥で痛みと生の残響が共鳴する
夜──
暗闇が全身を覆い、息苦しく、胸がモヤモヤと焼けるようで眠れない……
背中は硬い床に貼りつき、肩甲骨、腕、肘、膝、腰、指先、足先──すべてが軋み、冷え、痛む
胸の奥では心臓が沈み、呼吸は詰まり、内臓は圧迫され、胃腸は空虚と重みの間で苦しむ

声を出せず、涙も落とせず、濃い灰色の煙に包まれて沈黙だけが重くのしかかる…
それでも、愛猫の存在が、胸の奥の奥を和らげてくれて、唯一、呼吸ができる…
糸はほつれかけ、今にも切れそうで、それでも絶望と生命を絡めて離れない
目の奥の光、顔色の微妙な変化、手足の震え、鼓動の揺れ──
すべてが胸の奥で螺旋状に絡み合い、絶望と生命が共鳴する
そのときはもはや、わたしはその灯を欲していたわけでも、糸に縋ろうとしたわけでもなかった
むしろ断ち切りたく、消えてほしいと願った
いや、必死に灯を付けようと足掻いて、縋ろうとしていたのかもしれない…
どちらか、一方というわけではない…
縋るほど胸が締め付けられ、骨と筋肉が軋み、内臓が重く沈み、呼吸が詰まり、全身が痛む…
消えたい思いと、この子のために生きる思いが螺旋状に絡まり、胸の奥で絶望と生命を同時に刻む…
白濁の世界で、暗黒と絶望、怒り、戸惑い、胸の奥の苦痛 ──
それでも愛猫の存在は根強く、温かく、胸の奥の生命の糸を揺らしてくれる
胸の奥の切実さは静かに、しかし確かに、わたしを縛り、より消えない変容となり刻まれ続けた……
苦しみ、戸惑い、憤り、孤独……
言葉にならない ── それでも、消えずにここにある……
声は震え、呼吸は詰まり、骨はキシキシと重く軋んで、細くなっていくような感じがありありとする…
内側に、絶望と生命が、痛くも熱く、切なく、螺旋状に絡まり続ける
微かな鼓動、柔らかな毛、かすかな体温 ── そのすべてが、暗く冷たい胸の奥で、唯一の灯のように揺らぎ続ける……
(未完)

※ この物語はフィクションであり、心の記憶を元にした創作です。
登場する人物・団体名はすべて架空であり、実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
ホワイトアウト・イン ー 言葉のカケラのメモ ー
「言葉の糸」
誰かの 少しずつ紡ぐような
哀しみ 痛みの言葉の糸に触れて
近ければ近いほど
自分だけ特殊ではないんだ
異常なんかじゃないんだ
辛いと感じているのは 間違っていなかったんだ
ズレていなかったんだ
そう 一人でも感じてもらえたら
未熟な私が 未熟なまま 紡ぐ言葉
もし、よろしければ…
今回の記事を読んで、心に生まれたものを、お手すきの際に教えていただけませんか?
一度ゆっくりと深呼吸をしてから…
ご自身のペースで、心に浮かんだ感じを、少しずつでもお聴かせいただけたら嬉しいです。
いただいたお声は、毎回、隅々まで目を通して、これからの発信や対話を、より深く豊かにしていくための大切な糧として活用させていただきます。





