心の声 本音の叫び
精神症状の悪化により、入院中の40代半ばの女性がおられます。
彼女には、まだ小学生の娘さんがいますが、ずっと、離れて暮らすことを余儀なくされています。
そんな中、ある日、病院に見舞いに訪れた愛娘を、彼女は抱きしめ、涙ながらに思わず言ったそうです。
「○○ちゃん 会いに来てくれて ありがとう」
「…でも もう会えるのは 最後かもしれない…」
このやり取りを間接的に聞いた男性からの、沸々とした電話。
彼は、彼女に好意を寄せています。
以前から私は二人のことを知っていましたので、複雑な経緯と状況を把握していました。
彼いわく…
「かなり 心の中の状態は進行しているみたいで…」
「僕には、どうすることも出来ない」
「落ち込んでしまっていて、どうにかしてあげたいが、面会は身内でもなかなか許可はおりず、主治医の制限が厳しくて出来ない」ようです。
もう1年近く、全く連絡不通で退院を待ち望みながら、悩む日々。
やっとのことで、彼女の院内の様子を知ることにこぎつけた彼の話の様子から、色々な状況が感じられました。
彼女は以前、その彼に…
「私のこと 好き? どこが好き?」と、何度も何度も、くり返し聞いていたことがありました。
しばらく、彼の傾聴をしていて、私の中に浮かび上がり、見えてきたような大切なもの…。
それは、入院中の彼女の、心の声でした。
私の感じたもの… それは、彼女の存在理由と、強い自己否定
本当は…
「○○ちゃん(愛娘)と一緒に暮らしたい!」
「元気で お母さんらしいことをしたい!」
「私の全てを受け止めて 愛して欲しい!」
「人とのつながりや 社会貢献をしたい!」
「出来ない 自分が許せない!」
心療内科の通院をしながらも、入院前の元気な頃…
彼女は無邪気に笑い、アップテンポな西野カナさんの曲をカラオケで歌っていたり、娘さんとパンづくりをしたり、資格取得して就職にトライしたり、オシャレをしてイキイキしていました。
心がひどく昏迷している今は、心の奥底で本人すらも感じない程の小さな声で、彼女の心の声は叫び続けているだろうと思うと胸が痛くなります。
残念ながら私も面会させてもらえませんので、もっと早く、理想と現実のギャップに苦しむ、心の奥底の声に気付ければ良かったと思っています。
また、私が傾聴していた彼は、彼女に何も施せない状況と憤りの中で、電話の最後に…
「言っても どうにもならんのは分かってるよ。とにかく 今すぐ聴いて欲しかったんだ」
「ごめんね ありがとう」…と、覇気を取り戻した声で話してくれました。
問題の解決法や知恵、アドバイスも大事なのかもしれません。
そのこととは別に話して落ち着くプロセスや、気持ちが前向きに昇華していく状態とは、本質的に違うのですね。
わたしの経験からも周囲の友人・知人からも幾度となく、「心の病」の人と接する側の心のケア、または老人介護する側の心のケアの相談を、よく受けます。
… 疲れた時に聴いてくれる人は、そばにいますか?